安産とヨーガについてお伝えしたい事

  1. 自分らしいお産を考えましょう
  2. 陣痛は私達の味方です
  3. 安産への準備 (身体の気づき)
  4. 安産への準備 (心の気づき)
  5. ヨーガがなぜお産に役立つのでしょうか?
  6. 運動は、どこまでしていいの?
  7. マタニティ・ヨーガの利点は?

自分らしいお産を考えましょう

妊娠、出産は、女性の一生のうちで数回の貴重な人生のイベントです。

その出産を自分の満足のいく充実した体験としてみませんか?

自分らしいお産を考えることは、ご自分の生き方を考えるキッカケとなり、その後の人生を変える機会となることでしょう。例えば、今まで食べることに無頓着だった方も、「赤ちゃんのために、栄養のある物や有機野菜を食べよう」と、食事に対して考えるようになったり、環境に興味の無かった方も、子育てのしやすい地域を求めたり、エコロジーを心がけるようになったりと、妊娠・出産を通して様々な変化を体験する事でしょう。

自分らしいお産を考える事、それは単に「どこで、どんな風に産む」という事ではないのです。自分らしいお産をする為に自分がどう行動し、どう変わっていくのか、それを自分自身が楽しむ機会であると思います。そして、その過程の中に、すばらしい出産の体験があり、それに続く、育児を楽しむ自分らしい生活に繋がっていくプロセスであると私は思います。


陣痛は私達の味方です

出産や陣痛に対してどのようなイメージをお持ちですか?

痛い・怖い・不安といったマイナスなイメージは、身体の緊張を招き、分娩の進行を妨げるだけでなく、痛みをよりいっそう強く感じることに繋がります。

陣痛は、痛くないといったらウソになります。でもその痛みは、必要なものなのです。お産の主役は、出産をするあなた自身と、自分で産道を一生懸命通って来る赤ちゃんと、そして陣痛なのです。陣痛は子宮の筋肉が繰り返し収縮して赤ちゃんを押し出す力です。最初は緩やかな波で、波と波の間隔も長くして、赤ちゃんの負担の無いように始まります。

そして初産なら10時間位かけてゆっくりと強くなっていくのです。波が大きくなる毎に、あなたの身体からは陣痛に耐えられるように脳内麻薬が出てきます。

だから赤ちゃんも、あなた自身もその陣痛の波に合わせて行くことができ、乗り切ることができるのです。陣痛があるから、赤ちゃんは、大好きなママのお腹から出てみようという勇気も湧いてくるのです。赤ちゃんが狭い産道を通る時、子宮の収縮に度に、赤ちゃんの胸を圧迫して、呼吸運動を教えてくれているのです。陣痛が無ければ、赤ちゃんは決して生まれてくる事はできないのです。

だから、陣痛を恐れないで下さい。むしろ、陣痛の来ることを楽しみしてください。陣痛は私達の味方なのですから。


安産への準備 (身体の気づき)

安産の為の準備として、何をすればいいのでしょうか?

まずは、妊娠や出産の経過を知ることが必要ですね。便利なグッズや、先輩ママからの出産体験などもグッドな情報となりますよね。

そうした妊娠・出産・育児に対する知識を得る事の他に重要なのが、身体の準備ですね。出産には、結構体力が必要です。

出産を乗り切る一番のポイントは、いかに自分の身体をリラックスできるかという点です。陣痛の波がきたら、ゆっくりした腹式呼吸で身体の緊張を取りながら乗り切りましょう。そして陣痛と陣痛の間には、十分なリラックスをしてください。それによって、赤ちゃんには、一杯の酸素が行きわたり、あなた自身も出産の第一期(分娩室に入るまで)を楽に過ごすことができます。自然なお産の場合、夜中のお産がほとんどです。余計な力を使わないお産は、次の日から始まる育児に対しても身体が楽に対応できる事に繋がっていくのです。

子宮と産道の関係は丁度、スポイトと同じです。陣痛の波がきたら、子宮は収縮して、細い産道に赤ちゃんを押し出しているのです。その時、緊張して全身の筋肉が硬くなっていると、子宮の入り口も開かないし、産道も緩んでいかないのです。

逆にリラックスして身体が緩むと、子宮の入り口も開きやすくなり、産道も緩んで、赤ちゃんが通りやすくなるのです。だから、陣痛がきたら、腹式呼吸で身体を緩め、陣痛が収まったら、全身の力を抜いて全身をリラックスしてみましょう。

そうする事で、赤ちゃんもあなた自身も楽にお産を過ごす事ができるのです。

しかし、この腹式呼吸とリラックスは、頭で理解するだけでは、お産の当日やろうと思ってもできるものではないのです。普段から練習して、身体で覚えている事で、陣痛の波にあわせて自然と出てくるものなのです。

マタニティ・ヨーガの良い点は、この腹式呼吸と様々なヨーガのポーズを練習することで、身体の緊張とゆるめるという感覚を身体を通して体験することができ、自然と身体全身をリラックスさせる事を身に付けていくことができるのです。

そしてお産の場面では、どうぞどんな姿勢になってもかまいません。ご自分の「身体がこうしたい」という感覚のとおりに身体を動かしてみてください。それが、楽にお産を乗り切るコツなのです。そうした姿勢も、日頃行っているポーズが自然と出てくると思います。


安産への準備 (心の気づき)

ヨーガによる身体的なリラックスの経験は、精神的リラックスを味わう機会となります。つまり、身体がゆるめば、心も自然とリラックスするのです。

ヨーガを実践していくと、ご自分の身体の様々な身体感覚を感じ取る感覚が鋭くなっていきます。例えば、「こう筋肉を伸ばすと身体のここが気持ちいい」とか、「こうしたポーズの時は、呼吸をゆっくりして身体を緩めるとより気持ちいい」など、自分自身の身体の感覚に集中していくことを経験していきます。

そうした自分自身の身体に集中した意識は、しだいに自分自身の心の動きに集中していく事に向かっていきます。 ヨーガ本来の目的である自分の中にある自分自身への気付きは、日常の喧騒を離れ、落ち着いた、心穏やかな本来の自分自身や自分の求める姿を感じ取る機会となることでしょう。

マタニティヨーガは、2・3つのポーズの後にリラックスの時間があり、最後には毎回瞑想の時間があります。その瞑想を終えた後の参加している皆さんの心穏やかな表情を見る度に、深い瞑想を味わう事の大切さを感じています。


ヨーガがなぜお産に役立つのでしょうか?

アフリカや東南アジアなどのまだ近代化されていない地域で、医療の介在の全く無い昔ながらの風習の中でお産をしている人々は、お産が始まると、自然と自由な姿勢や動きして出産をしています。その動きは日頃行っている踊りだったり、歌だったりします。自然な生活のそのままがお産に必要な能力を蓄えているのです。

それに比べ、西洋文化・物質文明の中で生きる私達は、物事を理論的に捕らえ、行動しています。医療が介在するお産に慣れていると、お産には医療が無いとできないのではないかと錯覚するほどです。しかし、太古の昔からお産はあり、子供が生まれ育ってきました。本来お産は、自然な営みの中の一部であったと思います。もちろん、医療を否定するわけではなく、医療があるから助かる命のあることもわかっています。

そうではなくて、「自分で産む」という本来の能力が私達女性には備わっている事を思い起こし、その力を高めていく事が大事なことだと思うのです。

頭で物事を考えることに慣れていると、「自然な動きや姿勢をしてもいい」と言われても、どうしていいのかわからない方がほとんどです。まずは、自分の理性的な部分を取っ払い、自分の身体のおもむくままに、自由な自分を解放していくことに慣れていく事が必要です。そして身体の中にある無意識のエネルギーが活性化され、本能のままに行動できる力は、陣痛を受容し、陣痛の波と一体化して、最後に赤ちゃんを産みだすというクライマックスへと繋がっていきます。お産の場面で重要な自分自信に集中できる力、陣痛の波に乗って自然と一体となる感覚は、物質文明にどっぷり浸かっている日常の中では、そうした本能的な感覚や能力を培うことはできないのです。身体感覚を研ぎ澄ませ、「身体がこうしたい」という身体の声を聞く練習が、近代社会に生きる私達の多く方には、必要なのです。

ヨーガの実践を繰り返していく過程で、身体のリラックス、心のリラックスを通して、自分自身に集中していく経験を積み重ねます。その中で「身体の声」に自然と向き合い、それを自然と実行していくことがヨーガそのものの実践となっていくことでしょう。

どうか、マタニティ・ヨーガを通して、心と身体をリフレッシュして、本来自分自身に備わっている産む能力を高めていって頂きたいと思います。

さあ、あなたも今日から、おなかの赤ちゃんとご一緒に、ゆったりとした時間を楽しんでみませんか?


運動は、どこまでしていいの?

マタニティー・ヨーガは、普通のヨーガとは違い、筋肉を鍛えたり、つけたりする事を目的にはしていません。お産に必要な柔軟な身体や、腹式呼吸やリラックスを身に付ける事が大きな目的となっています。それ以外の効果として期待できるのが、腰痛や肩こりなどの妊娠に伴う不快症状を取り除く ことです。妊娠は病気ではないのですが、つわりなどの身体の変化に対して、「大事にしなくては」という心理が働き、妊娠する前よりも身体を動かすことに慎重になっている方も多く見られます。身体を動かさないでいると、便秘になったり、血液の循環が悪くなって腰痛や肩こりなどが起きやすくなります。

一度マタニティ・ヨーガを体験された方は、皆さん一様に、「こんなに身体を動かしていいんですね」「身体を動かすと気持ちいいです」という感想を口にされます。

妊娠したから普段しない運動を始めるのではなく、妊娠の経過に合わせた運動を行っていくことが大切です。マタニティ・ヨーガの他には、マタニティ・スイミング、マタニティ・ビクスなどがありますが、オススメなのは、散歩です。適度に歩くことは、お産に必要な体力や筋力をつけるだけでなく、妊娠によって歪み易い骨盤を調整する働きもあります。(骨盤については、後で詳しくお話します)一日8000歩を目標に歩いて見てみましょう。ただし、散歩をしたことのない方は、一日10分位から慣らして始めましょう。靴と靴下を履いて、散歩の前には準備体操、リュック(中身はハンカチ・ティッシュ・小銭・携帯くらい)で、手には荷物を持たないようにして歩きましょう。


マタニティ・ヨーガの利点は?

マタニティ・ヨーガの利点は、何も道具が要らなく、天気にかかわらず、いつでも、どこでもできることです。

マタニティ・ヨーガクラスに参加し、ヨーガのポーズを覚えて、家でも毎日少しの時間でも実行して頂けると、その効果を早く実感して頂けることと思います。クラスに参加される方は、最初は皆さん緊張されて、ゆっくりした腹式呼吸についていけなかったり、ポーズに気をとられて自分に集中できなかったりしますが、3回くらい参加されると、だんだんゆっくりの呼吸に慣れてきて、6回くらい参加されると、ポーズも頭に入って、自然に自分に集中していくようになります。そうなると、身体も始める以前よりも柔軟になり、リラックスがたまらなく気持ちよく、瞑想が心地よく感じられてきます。以前妊娠中にマタニティ・ヨーガを経験され、出産後にクラスに参加された方が、「以前妊娠していた時に感じたあの充実感が、おなかに赤ちゃんがいなくなったら、全く感じられなかった」とおっしゃっていました。マタニティ・ヨーガは、妊娠していない時のヨーガの体験よりも、妊娠している時の方がより深い感覚を味わう事ができるのです。

どうか、一人でも多くの方が、この心地よさを味わって頂きたいと思います。


<参考文献>
九島章二、森田俊一、森佐知子「自然出産とマタニティ・ヨーガ」メディカ出版1994